宮城交通の夜行バスの事故に見る、現代日本の問題。


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バス事故 宮城交通を捜索へ


また痛ましい事故が起きてしまいました。
宮城交通の夜行バスが、仙台から石川に向かう途中の
サービスエリアで、事故を起こし2人の死亡を含む
24人の死傷者を出す事故になってしまいました。


夜行バスを巡る大きな事故といえば
まだ、記憶にも新しい2012年4月に発生した
関越道で起こった高速バスツアーの事故。


死者7人を含む、46人の死傷者を出した惨事は
その後の、日本の高速バスの制度を大きく変える契機となり
2013年8月1日より、以前より安全性を重視した新しいバス制度が運用されています。


しかし、今回の事故はその安全性を重視した対策が練られた後で
起こっている事件になるわけで、やはり人が運転するモノである以上
危険は絶対に避けられないことであると、改めて思います。


そして、本日付のニュースで気になる内容が明かされています。


宮交バス衝突 運転手11日連続勤務 会社側「法定範囲内」


居眠り?をして事故を起こしてしまったとされる
運転手が、11勤務連続出勤であったということです。


また、睡眠時無呼吸症候群の要経過観察対象者でもあったということで
その原因と死因について、様々な推測がされるような状況にあります。


しかし、私が今回気になったのは記事にもある
宮城交通の担当者のコメントで

「法定の範囲内の勤務状況だった」と説明する一方、「運転手の人数が不足していた」と述べた。


というところです。


まず、法定の範囲内の勤務状況と言うのは
本来であれば、就業規則では週休2日の勤務形態であるところを
労働基準法で定められている範囲で、11日連続で勤務をしていたとのことです。


労働基準法では、バスの運転手は2週間に1日休みをとり
13日間上限で連続勤務をすることが出来るという基準があるようです。
(注・宮城交通が結んでいた労使協定にて、同意を得ていた勤務形態とのことです)


ただしこれは、逆に働き過ぎを抑制するための取り決めであって
2週間に1日の休みで目一杯使っていいという解釈では決してないのです。


法律上は問題は無いものの、常識的に考えれば
人の命を多く預かる大型車の運転手が
このようなタイトなスケジュールであること自体に
企業側のモラルハザードを個人的には感じてしまいます。


また、運転手の人数が不足していたという
コメントについては、背筋が寒くなる話です。


つまり、慢性的に少人数でキツキツな状態での運用であり
いざという時の替えが効かず、運転手は多少無理をしてでも
バスを運転しなければならないということです。


また、昼間は500km、夜間は400km以上を
1人の運転手で運転することは禁止され
二人以上の、代替要因をバスに乗せて運行しなければいけません。
ここで、更に人員が削られ、結果休みが少なくなるのです。


更に新制度に移ってから、現在の高速バスについては
全て「路線バス」として、定時運行、定時発着を
義務付けられています。


どんなに客が少なかろうと、「路線バス」である以上
毎日決められた便を発着させ、客が全く居なくても
バス会社は運行をせねばいけないのです。
ですから、何とかして運転手を確保せねばならないのです。


以前と比べて、運行数を少なくして
交通会社はコストを抑えるなどしていますが
今現在、不景気で地方路線などは利用者が毎日居るわけでは無いですし
また、円安によって燃料代のコストもバカにならないほど上がっています。


そう考えれば、自ずと見えてくる問題として
既に交通会社は、儲けが少ないカツカツの状況で
高速バスを運行しているであろうということが見えてきます。


苦しい運営を、少しでも改善するのに
今のところ削られるのは、日本では人件費が主です。
すなわち、従業員を減らす。


その結果が、今回の宮城交通の担当者のコメント
「運転手の人数が不足していた」という一言に集約されています。


残念ながら、バス会社の運営というのは
今回の宮城交通だけではなく、全国的にも
同じような境遇の状況の会社はかなり多いかと思います。


例えば、以下は小田急バスの高速バス表示ガイドラインに基づく表示のページですが
はっきりと以下の内容を記載しています。

また、事業計画や運行計画を進める上で必要な経費はもとより、安全への投資も直接バス会社が行っているため、運賃に反映させていただいています。コストダウンと安全性の両立はできません。


ここまで馬鹿正直に書くのは、なかなか無いですけれども
他の会社もおそらく似たような問題を抱えているはずです。


となれば、現在の新制度になった夜行バスに乗ることも
一定のリスクを伴うことになると考えられるものになり
「安かろう悪かろう」のリスクを、利用者はよく考える必要があると思います。


安全に行きたいのであれば、もっと事故率が低い
新幹線(乗客の死亡はまだ0だったかと思います。)などを使うのがオススメだと思いますが
今の日本の経済の状況から考えると
高い新幹線を使うよりは、多少リスクがあろうとも
安い高速バスでいいやと選択する人も多いかと思います。


誰しも安全で格安の旅をしたい…
という願望はあるかと思いますが
今の日本では、もはや妄想の類になりつつあるのかもしれません。
安全という信頼に対価を払うことの重要性を改めて考えるべきなのでしょう。

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